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霧のオルリー
なぜならその朝
深い霧に包まれていたオルリーは
遅く目覚め
灰色のかもめのように
ねむる翼ただんだまま
飛べずにいた
なぜだかあなたがいて
憂鬱なわたしがいて
ふたりはふと目を合わせた
※そこには何にも
けれどもすべてが
なくした春の微笑みに似ていた
ほかには何にも
それでもふたりは
愛し合うためだけに
時を忘れた
なぜならその時
霧は空を覆いつくし ふたりだけの
褥になり
思い出も残さない
束の間の でも本当の恋
隠していた
ただ与えあったふたりは
未来も悔いも思わずに
すべて忘れて
※の部分 繰り返し
眩しい光が霧を裂いて
旅立ちを告げ それぞれの
通路に立ち
ほどかれたまだ熱い指
こみあげるものを抑えふたり
振り向く目に
森の奥の秘密のように
ただひとり胸に秘めて
明日からはまた
※の部分 繰り返し
<語り>
明日からまた
憂鬱な日々が始まるだろう
あの日の霧は一度だけ
私を人生から逃がしてくれた
深い霧のなかに
――――――――――――――――――
コロナが終われば、こんなアバンチュールに遭遇することもあるかもしれません。
どんなカップルを想像しますか?でもこんなストーリーは、どんどん時短化されていくなかで少なくなっていくかもしれませんね。歌だってイントロもないんだから、湯帳に人生なんて見つめていられない、とか。
この詩は古坂(ふるさか)るみ子さんに2003年9月のコンサートで歌っていただいたのが初お披露目となり、その模様はCD化されています。
この時のコンサートでは、1曲目「ひとつき いちにち」、2曲目「早すぎず遅すぎず」、3曲目「街の舞踏会」、4曲目「上海リリー」、6曲目「私を待つ人」、7曲目「霧のオルリー」、8曲目「忘却」、10曲目「ナハチガル」、11曲目「また恋しちゃったの」、15曲目「私はあなたのもの」、17曲目「Good Night」の以上11曲の訳詩を提供させていただきました。こうして私の詩を歌っていただきCDとして残していただいたこと、うれしく思います。

「霧のオルリー / Escale à Orly」は、1974年にパタシュウ(Patachou)が発表したアルバム『Tiens... ! Patachou』に収録された作品で、このアルバムは、翌年日本でも『パ・コム・サ』と題して発売されました。
原題は「オルリーの途中降機」という意味で、さらに "Brève Histoire(つかの間の物語)" という副題が添えられています。
作曲者はジェラール・キャルヴィ(Gerard Calvi)という人。作詞者は日本盤にはN. Bussyと記載されていますが、SACEM(フランスの音楽著作権管理団体)で調べるとこの曲の作詞者は Betin Andrée と記されています。同一人物かどうかは調べがつきませんでした。
- 現在、この詩で歌われている方は、どうか是非私にご連絡くださるようお願いします。
詩の権利は作った人に属するもので、最初に歌われた方にあるのは初演権です。
ましてや人から人への転売は犯罪です。長い間そのことが誤解されてきましたが、ご理解いただければと存じます。アマチュアでひとりで口ずさむだけとおっしゃる方はともかく、ステージに立っていらっしゃる方やレッスンで使われている方は必ずご連絡ください。
また、今後歌いたい方もご連絡くだされば、歌についてのご説明もします。